矯正治療Q&A
下記の文章は、当院院長が所属している日本矯正歯科学会の質問集をもとに、よりわかりやすい内容となるように、専門用語をわかりやすい単語に置き換えるなどの微修正を行った文章です。
患者さんそれぞれの状況で、悩んでいる点や疑問点は異なるものと思います。歯並びのお悩み解決に、もっとも効果的な方法は、お口の中を見せていただいてからのカウンセリングです。
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治療の必要な不正咬合の判定基準
- 私の歯並びはかなり悪く、人から指摘されることがあります。治すべきかどうか、判定する方法があれば教えてください。
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通常、私たち矯正歯科医が診て、完全に美しい歯並びと咬み合わせの人はほとんど稀で、大なり小なり悪いところがあるようです。日常生活において支障をきたしていると考えられる場合、治療の対象となりますので、一度矯正歯科治療を専門に行う歯科医院でご相談されることをお奨めいたします。
また、口元が出ているなど、歯に起因する顔の美醜も問題になることがあり、劣等感など精神的問題につながることもあります。簡単な歯並びや咬み合わせのチェックには、以下のようなことが挙げられています。1. 顔や歯並びが左右対称か。
2. 横顔で唇がひどく出ていたり、引っ込んでいることはないか。
3. 上の歯はすべて下の歯を覆っているか。
4. 上下の前歯の中心が一致しているか。
5. 歯が重なっていたり、間に隙間はないか。
6. 上の前歯や下の前歯が前方に出ていないか、その逆はないか。
7. 前歯がひどく伸びだしていることはないか。
8. 部分的に食物が歯の間に停滞したり、はさまることはないか。
9. ひどく磨り減っている歯はないか。
10. 口臭が気にならないか。
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不正咬合による悪影響
- 私は歯並びが悪いのですが、食べることには不都合を感じていません。このままずっと放置すると、どんな不具合が起きるのでしょうか。
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悪い歯並びや咬み合わせがあると、以下のような問題が起こると考えられています。
1. 顎の正常な成長・発育が阻害される。
2. ますます歯並びや噛み合わせが悪くなる。
3. 硬い食物を食べることが困難になる。
4. むし歯や歯周病になりやすく、歯の寿命が短くなる。
5. 口元が悪く、劣等感を感じることがある。
6. 悪い歯並びの影響で、全ての歯にバランスよく咬合力(かむ力)が加わらない場合には、負担が集中する歯の寿命が短くなる。
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治療のメリットとデメリット
- 私は歯並びが悪く、矯正歯科治療を受けるかどうか悩んでいます。治療の利点と欠点を教えてください。
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矯正歯科治療は、顎や歯を動かすことによって歯並びを整え、咬み合わせを改善することで、健やかな人生を送っていただくためのものです。しかし、治療のデメリットもあることを理解していただかなくてはなりません。一般に以下のことが挙げられていますが、それぞれの患者さんによって状況は異なります。また、治療を受けられる年齢や時期によっても異なりますので、実際に矯正歯科医院を受診され詳しくおききになられ、矯正歯科治療を受けるかどうかお決めになることをお奨めいたします。
1. 少しずつ顎や歯を動かすために、長期間の治療となる。(一般的に、治療期間は短くても半年以上必要となる場合が多いです。1か月で、歯並び治療が終了するというような宣伝は、歯を削ってかぶせる治療方法である場合が多く、一般的な矯正治療とは目的や方法が異なります。)
2. 保険が適用されず、自費すなわち患者さんの全額負担となるため、高額になることがある。
3. 装置を装着するため痛みや圧迫感があり、ストレスとなる場合がある。
4. やむを得ず、健康な歯を抜くことがある。
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治療を受ける矯正歯科医院や病院の選択方法
- 矯正歯科治療を受けたいと考えていますが、先生によって上手・下手があり、治療期間も長く、費用も高いと聞いています。良い矯正歯科を見つける方法を教えてください。
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矯正歯科治療は非常に専門性の高い医療で、一般に歯科の大学を卒業した後に、さらに十分な修練を積んだ先生が治療にあたります。治療は顎や歯を動かす前に、これらの精密な検査を行いますが、これらの検査機器が整っていることも条件であり、さらにスタッフ教育など院内体制も充実していなければなりません。
従って、料金が安いことや単に近所ということで、安易に矯正歯科医院や病院を選ばないよう注意が必要です。日本矯正歯科学会では認定医制度を実施しており、審査に合格した先生に対して、一定以上の知識と技術を取得していると認定しています。認定医を取得されている先生の医院や病院を選択されることもひとつの方法です。
いずれにしても、とにかく矯正歯科を標榜する歯科医院や病院で矯正相談を受けられ、十分な説明を受けられた後、帰宅されて検討されることをお奨めいたします。ご不安な場合、料金はかかりますが、他の医院や病院でもう一度矯正相談を受けてみられる(セカンドオピニオン)ことも良い方法です。
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子供の矯正治療
- 子供の矯正はいくつぐらいに始めた方がよいでしょうか?
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お子さんの状態によって、適切な治療開始時期は異なります。一般的には、前歯が生えそろう7〜8歳に矯正歯科治療を専門に行う歯科医師でご相談されるとよいでしょう。しかし、指しゃぶりなど「お子さんの日常習慣」に問題がある場合や、「下あごが出ている場合」には、より早い時期の治療が効果的な場合もあります。お子さんの歯並びが気になった場合には、「早期受診」をおすすめします。
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大人の矯正治療
- 大人でも矯正治療は可能ですか?
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矯正治療技術の発達により、大人でも質の高い矯正治療が可能となってきています。最近では、50代、60代、70代の患者さんも増えてきました。
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矯正装置の種類
- 矯正歯科治療を考えていますが、装置が見えるのは仕事に支障がありそうです。どのような装置があるか教えてください。
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矯正歯科医が矯正装置を選択する場合、効果的で見えにくい装置を第一に候補に挙げます。しかし、見えにくい装置といっても、患者さんと先生の間には意識のズレもあり、患者さんが満足されない場合もあります。近年では、取り外し可能で透明な装置もありますが、治療に限界があることも多いようです。
一度、矯正歯科の医院や病院で、矯正相談を受けられ、あなたに入れる可能性のある装置を実際にみていただくことが良い方法と考えられます。
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矯正歯科治療とスポーツや吹奏楽器との関連
- 二人の子供の歯並びが悪く、矯正歯科治療を考えています。スポーツや楽器を吹くことなどが、悪い歯並びや矯正の装置に影響があるでしょうか。
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一般に、スポーツには身体のバランスが必要であると考えられます。咬み合わせの改善によって、バランスも改善されることは種々の分野のアスリートたちも証明しているところです。矯正歯科治療中に強くかみ締めると一時的に痛みが出ることもありますが、長い目で見ると早い時期に治療されておくことをお奨めいたします。
次に、吹奏楽器を演奏する場合ですが、矯正装置を入れた当初あまり良い音色は出ないようです。しかし、数ヶ月もすれば、慣れてもとの音色に戻るとのことで問題ないようです。
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治療と受験、妊娠、転居その他の環境変化との関連
- 子供の歯並びが悪いのですが、高校受験期にあります。しかし、本人はどうしてもすぐに歯並びを治したいと言い張り困っています。アドバイスをお願いいたします。
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ご質問から判断して、すでにすべての歯が永久歯になっていると推察されます。このような場合、一般に使用する矯正装置はほとんど全ての歯の表面に取り付けるマルチブラケット装置を使用することが多いようです。このような装置を装着した当初、歯を圧迫して移動するため、子供では2~3日、成人では1週間程度痛みが続き、硬い食物も食べられないようですが、以降、徐々に痛みも収まり、元の食生活に戻ることが可能です。通院ごとに装置を調節するため、再び痛みがでますが、そのインターバルは短くなり軽減してきます。
いずれにしても、受験期は人生の大切な転換期であり、少しでも治療などのストレスを回避することも必要かもしれません。本人に治療を受けたい強い意思があれば、治療と勉学を両立できますが、受験後に治療を開始されてもあまり不都合はないと考えられます。
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治療に関する保険適用
- 矯正治療には、健康保険は適用されますか?
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残念ながら通常の矯正治療は、健康保険が適用されません。ただし、当院は、自立支援医療(更生・育成医療)指定機関です。国に指定された、先天性疾患(口唇口蓋裂等)や外科的矯正治療には、健康保険が適用可能です。
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見えにくい矯正装置
- 目立ちにくい治療は可能ですか?
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当院では、通常の表側矯正として、「目立ちにくい審美ブラケット」、「ホワイトワイヤー」などの目立ちにくい装置をご用意しています。また、より目立ちにくい装置をご希望される場合には、上顎だけ歯の裏側に装置をつける「ハーフリンガル矯正(下顎は表側矯正)」をおすすめします。
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矯正のための手術について
- 受け口の矯正歯科治療希望のため、矯正相談をしたところ、随分悪いため顎の骨を切る手術を勧められました。手術をしなければならないほど悪いとは考えておりませんでしたので驚いています。このような例は多くあるのでしょうか?
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歯並びや咬み合わせ(不正咬合)が極めて悪い場合、とくに上下の顎がずれていることが原因で生じた不正咬合は、まず顎の大きさを改善することが正しい治し方といえます。顎のずれを治療せずに、歯を動かす矯正歯科単独治療で改善しようとしても、なかなか無理があり、いずれ元の悪い状態に戻ったり、歯の寿命を早めてしまう危険性もあります。
このような不正咬合の方は顔貌も好ましくなく、手術によって改善を図ることがあります。一般に、手術を行う場合、手術の半年から1年前にマルチブラケット装置を装着して矯正歯科治療を行い、そのまま手術後にも咬み合わせの微調節を行うために歯の移動を行います。これら一連の治療については健康保険が適用されます。
いずれにしても、これらはあくまでも一般論ですので、矯正歯科医院での手術を伴う矯正治療についての提案があった場合には、実際に手術をお受けになる予定の病院で、手術の方法とリスク、また予想される入院期間や回復までの期間、さらには後遺症や治療費などに関して、十分説明をおききになり、十分な理解と納得の上で治療を選択されることをお奨めいたします。
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医療費控除
- 矯正歯科治療でも医療費控除ができると聞いたことがあります。私は会社に勤めていますが、医療費控除ができるのでしょうか。
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一般に、医療を受けられた場合、確定申告の際に医療費控除をすれば税金が戻ってくることがあります。咬み合わせや歯並びを改善する矯正歯科治療も同様ですが、美容が目的の矯正歯科治療では医療費控除ができない場合もあり、成人の場合は医療費控除ができない場合が多いようです。戻ってくるには所得や医療に費やした金額によって異なってきます。詳しいことは管轄の税務署にお尋ねにならなければなりませんが、医療機関で発行された領収書は必ず保管しておいてください。
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痛みについて
- 矯正治療は痛いですか?
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毎月の調整後、約2日~1週間ほど、食事時を中心とした、違和感や鈍痛が発生します。しかし、当院では、痛みの出にくい「ローフリクションブラケット」や「力の弱いワイヤー」の積極的な使用により、できるだけ痛みを抑えた矯正治療に努めています。
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「顎関節症」とかみ合わせ
- 顎関節症は矯正治療で治りますか?
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「顎関節症」とかみ合わせ(咬合)との関係は未だ不明な点が多いのが現状です。矯正治療により、バランスのよいかみ合わせを整えることは、顎関節症発症のリスクを低下させることが可能です。また、矯正治療前にすでに顎関節症を発症している患者さんに対しては、重症度に応じて、かかりつけ医院や病院歯科との連携治療をご提案させていただきます。
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歯磨きについて
- 14歳の男子ですが、矯正の装置を入れ1ヶ月程度経ちました。非常に複雑な装置のようで、歯磨きを十分にできないようで、いろいろな色の食べ物がはさまっているのが、母親の目にも映ります。1年以上、このような装置をずっと付けてむし歯になるようなことはないでしょうか。
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矯正の装置が入ると、確かに十分に歯磨きをすることがかなり困難になります。従って、我々矯正歯科医は装置を入れる前に十分な歯磨き指導を行い、お口の中の爽快感を体感して、複雑な装置を入れてもその爽快感を維持していただこうと考えています。最近では、フッ素入りの歯磨き剤がほとんどであり、むし歯の発生はかなり低くなってきましたが、粘着性のある食物は極力避けていただき、三度の食事の後は必ず歯磨きを励行するようお願いをしています。奥歯の装置周辺はとくに食物の残りカスが停滞しやすく、むし歯の発生や歯肉が盛り上がることがあります。
外食される場合には、必ず歯ブラシを持参するようにしてください。学校などで歯磨きができにくい場合は、せめてウガイをするようにお願いします。矯正用の歯ブラシや円錐形の歯間ブラシもありますので、複雑な装置の周辺ではこれらを併用することをお奨めいたします。
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転医
- 転勤や引越があった場合にも治療を続けられますか?
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患者さんとご相談して、なるべくお引越し先に近い矯正歯科治療を専門に行う歯科医師へご紹介させていただきます。転院の際には、転院資料(治療計画書や治療経過報告書など)を作成しますので、ご安心ください。
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保定装置の重要性
- 現在、15歳の息子で、矯正治療が終わり、取り外しのできる保定装置というものになりましたが、面倒臭がってなかなか使用しません。やらなかったら悪くなるのでしょうか。
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歯並びや咬み合わせの改善のための歯の移動が終わると、新しい歯の良好な位置を維持するための保定が始まります。移動完了直後の歯はかなり動揺しています。これは、歯の周囲の骨や歯肉などの組織がしっかり歯を堅固に取り巻いていない理由によります。従って、保定装置を使用しなければ、もとの悪い不正咬合に戻ってしまうことになりかねません。通常、1年以上は毎日保定装置を使用する必要があります。どうしても忘れてしまう場合には、固定式の保定装置に切り替えることも考慮に入れなければなりません。主治医に相談してみてください。
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後戻り
- 学業が忙しいせいか、高校生の娘が保定装置をついつい忘れ、歯並びが悪くなってきたような気がします。本人も気にしているようです。このような場合、どうすれば良いでしょうか。アドバイスをお願いします。
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保定装置を使用しなければ、もとの悪い不正咬合に戻ってしまう傾向が出てきます。できるだけ早い時期に主治医にご相談ください。気になるほど悪くなっているようであれば、再治療となりますが、早い時期であれば多くの場合、短期間で治療を終えることができます。
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歯を抜かない非抜歯矯正
- なるだけ歯を抜かないで治療したいのですが?
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昔の矯正治療では、約7割の患者さんに、抜歯矯正が必要でした。しかし、歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療(インプラント矯正)に代表される矯正治療技術の発達は、歯を抜かない「非抜歯矯正」の可能性を大きく高めました。当院では、歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療(インプラント矯正)などの治療テクニックを応用して、できるだけ歯を抜かない矯正治療を目指しています。